中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

独立起業したがうまくいかない友人から借金の依頼をされる寂しさ

貸すのは断るよりラク。それでも貸さない理由

 そこで私が、「わかりました」と言うことは簡単です。何しろ、借金というものは、断る側がなぜか「オレはなんて人でなしなんだ。困っている友人を助けないなんてどういうことだ」と自己嫌悪を抱くものですから。「わかりました。明日、銀行から振込み手続きをしておきます」といえば、「とりあえずこの人から嫌われることはないだろう」と思えます。貸すのは断るよりラクなのです。しかしここでは、貸さない理由をきちんと伝えることにしました。

「人にカネを貸すと『あのカネがあったら……』といつも思うんですよ。正直、借金というものは返ってくるかどうかは分からないものです。スーパーで130円のアジフライを買おうと思った時、『あと5分も待てば30%引き』のシールを貼ってくれるかもしれないから、もう少し店内をブラブラするか、なんて思うものです。39円のために、いちいち心が乱れるのです。自分はそういう人間ですから、仮に500万円を貸してしまった場合、毎度お金を使うたびに『あぁ、あのカネがあれば、この薄い牛タンではなく厚切り牛タンを躊躇なく頼めたのに』とか思うことが分かっています。

 そもそも500万円というカネは、30代のそこそこ安定した会社の正社員が年間でやっともらえる金額です。1年間、苦しい思いをしながら自分の時間を会社のために使い、ようやく得られるカネです。それなのに、その額を手にするために、こうしてたった1枚の紙に書いて出すこと、そしてこれまでの信頼を基にそれを得ようという心根には本当にがっかりしました。

 私はこれまでも何度か人にカネを貸してきましたが、借金を依頼してくる側はオレほど節約していないし、無駄な出費が多いように感じられます。オレはカネのありがたみが分かってるから、本当に必要なモノしか買わないし、会社を経営するにしても、見栄のために立派なオフィスを持ったり、余計な人員を雇ったりしません」

 彼の事業の売上が減少しているのと、利益の少なさを見ると、ここは一旦潮時では、とも感じました。スタッフを何人か雇ったり、販促支援のためのアプリ開発費用もかけたりしていますし、サーバーもレンタルしています。事務所は数か月前に解約し、現在は自宅で仕事をしているようです。

 私自身、小さな会社をやっていますが、その経営スタイルは「固定費を極限まで減らす」ということにあります。従業員2人の超零細企業なだけに、いつ契約を打ち切られるか分かりません。そんな時に、豪華オフィスの家賃やら、高級車のローン、見栄のために雇ってしまった美人秘書などがいたら、すぐに立ち行かなくなります。

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