そこで政府はタイなどから米を緊急輸入しましたが、本当にウマい「香り米」などではなく、タイの低級品が輸入されただけに「ネズミの死骸が入っていた」などの報道も出ました。すると、タイが好意で米を緊急輸出してくれたにもかかわらず、今度はタイ米への批判が殺到。なぜか「コメ国粋主義者」のような人々も登場し、国産米がいかにタイ米よりも優れているかを力説したりもしたのです。
そして、政府は国産米とタイ米を混ぜた「ブレンド米」を販売するよう指導するなどし、一部ファストフード店ではブレンド米が採用されることとなりました。
さらに、小売店の中には、国産米とタイ米の抱き合わせ販売をする者も登場し、当時大学生だった私の周辺では「ファミコンのドラクエ4発売以来の抱き合わせ商法かよ」といった呆れ声も出ました。タイ米をマズい、という声があまりにも多かったため、タイと日本の間では外交問題になったほか、漫画『美味しんぼ』ではこの時の日本の風潮を批判するなどし、当時の日本人のゴーマンさを表す出来事となりました。現在35歳以上の人はあの騒動をよく覚えているのではないでしょうか。
「#米がないならタピオカ食べればいいじゃない」
知り合いの定食屋の息子(40)は当時の様子をこう振り返ります。
「いやぁ~、よく覚えていますよ! ウチはなんとか国産の標準米を仕入れることができたので、お客さんには国産米を出せましたが、家のご飯は全部タイ米でした!」