9月6日、イギリスの上院議会でEU(欧州連合)離脱延期に関する法案が承認されたことにより、ポンド円相場は急騰した。はたして今後の相場の見通しはどうなるのか。ジョンソン英首相の誕生から乱高下するポンド円の状況と今後の先行きについて、FX(外国為替証拠金取引)などのカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが解説する。
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ジョンソン英首相がもくろんでいた早期の解散総選挙は実現困難となり、ポンド円相場では1ポンド=130円を越え上昇。ポンド円価格のチャートを見ると、短期的に二番底を形成したため、まだ反発する余地があるとも考えられます。
テクニカルツールのフィボナッチ・リトレースメントによる分析では、直近の高値1ポンド=148.89円から1ポンド=126円までの下げ幅に対して23.6%戻しを達成し、3分の1水準まで戻す可能性もあります。
今回のポンド円上昇は、ショートカバー(売りポジションの決済)が原因と考えます。これはどういうことでしょうか。ショートカバーで上昇する仕組みについて、ドル円の売りトレードを例に説明しましょう。
FXでドル円の売りを行う場合、為替市場では「ドル売り/円買い」が行われ、反対に保有したドル売りポジションを決済する際には、「ドル買い/円売り」が市場で行われます。これが新規に買いポジションが増えなくても相場の高騰を引き起こす「ショートカバーによる上昇」の仕組みです。
さて、直近のポンド相場を振り返ると、7月にジョンソン首相が誕生しイギリスの合意なきEU離脱(ハードブレグジット)の可能性が強まることで、ポンド相場はハードブレグジットを織り込みながら、売りポジションが段々と積み重なっていったと予想できます。
こういったケースでは思惑に反するニュースが報じられると、すぐに売りポジションを決済するフローが出始めるもので、EU離脱期限の延長法案可決を引き金に、ポンド売りをしていた投資家たちの急速な手仕舞いを招き、ショートカバーによるポンド急騰となりました。ショートカバーの上昇はいつ終わるか予想しづらいもので、ここから買いポジションを保有するかどうかは、チャート分析を経て判断するのがよいでしょう。
先行きが予想しづらいポンドとユーロは、どちらも需給バランスが偏っていますので、トレードをするなら短期的な目線で行うことが望ましいでしょう。需給バランスが偏るときというのは、ファンダメンタルズとは反対に動くことがあるので、その点にも注意が必要です。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)