「観る人によっては確かに下品なところもあるかもしれないけれど、人として大切なものが描かれている」というのは、30代女性会社員のBさんだ。
「当時は内容が下品だし、しんちゃんの口調を真似る子も多くて、『見ちゃいけない』と言われている家庭も周りにありました。私の親もあまりいい顔はしていませんでしたね。でも、ひろしの父親としての誇りと愛、家事を見事にこなすみさえのすごさと大変さ、しんちゃんたちの友情、そして何より家族愛や家族の団結が描かれているのは、何よりステキ。特に映画はイメージが違います。“泣けるしんちゃん”でかなり印象が変わった人も多いはず。こういう温かい家庭を私も築きたいなって思います」
Bさんはみさえのように専業主婦に憧れた時期もあったが、今は共働きを前提に、ひろしに近い男性を探しているという。
「みさえの朝のカオスな働きぶりを見ると、専業主婦はものすごく大変。だからせめて、ひろしに近い男性と結婚したい。大手企業でなくても安定企業の正社員で平均所得、仕事熱心だけど家族思いの男性……。でも、そんな男性はいてもすでに結婚していますよね。みさえがすごく羨ましい。足が臭いことなんて、全然目をつぶれます(笑)」(Bさん)
30代男性会社員・Cさんは、大人になった今あらためて、「ひろしは子どもと一緒にご飯を食べられる時間に帰宅できていいな」というのが本音だ。
「野原家っていいですよね。ひろしはほぼ定時退社、愛妻のみさえが作った料理を食べながらビールをすする。子どもとお風呂も一緒に入れる。昔は当たり前の光景だったのでしょうが、今となっては、どちらかといえば“余裕のある”家庭。もはや多くの人にとっては憧れや理想の家族の対象だと思います」
同じ国民的アニメでは、『サザエさん』の磯野家・フグ田家のように親子孫三代で一戸建てに暮らすというライフスタイルも、今ではほとんど見かけなくなってきている。時代とともに平均的な家族像のスタイルは変容しているが、アラサー世代にとっては『クレヨンしんちゃん』の野原家が憧れの家族像として身近に感じられるようだ。