中心部と比べると家賃は半額で貯金も貯まる
前述の調査によれば、大阪圏における職場からの平均的な往復時間は、1時間26分。その1.5倍以上となる約2時間半をかけて通勤しているのは、大阪・梅田に職場のある20代女性会社員・Bさんだ。
「会社近くの賃貸物件の家賃相場は10万円ほど。また徒歩圏内でもない限り、確実に通勤ラッシュに巻き込まれることになる。それならば、駅から多少遠くとも乗り換えがなく、始発で確実に座れる駅を選びました。車内では本を読んだりスマホで動画を観たりと、趣味を楽しむ時間に使えています。会社から定期代が支給されるから交通費の心配もないうえ、家賃も府の中心部と比べると半額以下で済むので、貯金も溜まる。休みの日に会社の人に会うこともないので、変な緊張感もなく住みやすいです」
もちろん良い面だけでなく、デメリットも存在する。
「帰りの電車では、座れる保証がない。終電を逃した結果、1万円近いタクシー代を支払うこともあります。忘年会や歓送迎会などのシーズンは、結局家賃との差分を浪費してしまいがちです」(Bさん)
ストレスの少ない、都心から郊外への通勤
中心部に出勤する人が多いなか、時間をかけて郊外に出勤する人もいる。IT企業に勤める40代の女性・Cさんもその一人。夫婦名義で購入した都内のマンションから、2時間弱かけて通っている。
「ITシステムの構築を行う会社に勤務しているのですが、担当プロジェクトごとに客先に常駐することになっています。場合によっては、茨城県や静岡県へ出向くことも。最初は1時間半から2時間かけての通勤を不満に感じていましたが、今ではずいぶん慣れました」(Cさん)
Cさんは、都心部から郊外への出勤は、「メリットの方が大きい」と語る。
「通勤ラッシュと正反対の移動になるので、電車が混んでいないことが何よりのメリット。毎日座って、常駐する企業へ向かっています。また、帰り道は仕事終わりの機嫌の悪いサラリーマンや、酔客と遭遇することも少ない。よく、こんなに時間をかけて通勤するのは“時間の無駄”と言われるのですが、ビジネスホテルに泊まるよりは、自宅へ帰った方が安心もするし、疲れもとれやすいので、他の選択肢は考えにくいです」(Cさん)
1日の数時間を通勤に奪われるデメリットはありつつも、それぞれの価値観。長い通勤時間を有意義に使っている人もいるようだ。