所得や経済的な状況の違いによって健康にも「格差」が生じている。たとえば、年収が低い人ほど、肥満の割合が高いとのデータが出た。2015年に発表された厚生労働省「国民健康・栄養調査結果」によれば、所得が600万円以上の世帯に比べて、200万円未満世帯の人は、肥満の割合が高いことがわかった。
さらに同データからは、低所得世帯の人は「穀類の摂取量が多く、野菜類や肉類の摂取量が少ない」「習慣的に喫煙している者の割合が高い」「健診の未受診者の割合が高い」「歯の数が20本未満の者の割合が高い」ことも明らかになっている。
その一方で、データには表れていないが、医療現場からは貧困でも裕福でもない「中間層」こそが、もっとも不健康だという声が上がっている。秋津医院の秋津壽男さんが解説する。
「中間層の人たちは、会社で健康診断を定期的に受けているし、食事にもある程度気をつけて、健康に気を配ることができるはず。でも、肝心の健診結果を怖いからといって開封しなかったり、仕事が忙しくて運動をしなかったりする傾向があります。
クリニックで診察している患者さんの話を聞いていても歩く量だけでいうと、中間層が歩くのは通勤時だけ。いちばん歩いていないといわれています。高所得者と違ってジムに行くお金はないし、低所得者と違って肉体労働もしない。体を動かさないので肥満が多く、生活習慣病になりやすい」
健康に気を使った方が安い
年収と病気の相関関係がわかったら、それをどう普段の生活に生かせばいいのか。秋津さんは「病院に行く時の意識を変えるだけでも違ってくる」とアドバイスする。
「病気がすぐに回復する人は、医師の話を聞く時に、自分から積極的に質問する印象があります。別の疾患で来院した時に『最近、高血圧も気になっている』と相談するなど、自分の健康状態に関心をもっている人が多い。普段からのこうした意識の積み重ねが、健康につながるのではないでしょうか」(秋津さん)