しかし「可愛い孫のために一肌脱ぐか」と安易な気持ちで会長を引き受けると痛い目を見るかもしれない。都内の小学校の現役PTA会長で弁護士の岡田卓巳氏が指摘する。
「昔のPTAは会長交際費が潤沢にあり、校長や保護者と一献傾けてタダで飲み食いできるイメージがありましたが、いまはそうした予算はほぼ全滅して実務的な仕事ばかりになりました。祖父母が昔のイメージのまま会長になったら、『え、そんなにお金使えないの』と驚くはずです」
2年前に小学校のPTA会長を引き受けた都内在住の男性(55)が振り返る。
「どうせ閑職だとタカをくくっていたら週1でミーティングがあり、地域の会合や区内の会長会にも呼び出され本当に忙しかった。
しかも校長から、『〇〇さんの子供がいじめの加害者みたいなので様子を探ってくれ』といった“密命”を受けるケースもあり、神経をすり減らしました。研修会名目の飲み会にも自腹で出る必要があるし、金銭的にも持ち出しが多かった」
『PTA不要論』の著者でノンフィクションライターの黒川祥子氏は、「人間関係でストレスを抱えるPTA会長も多いようだ」と指摘する。
「旧態依然の組織を改革しようとしたら前例踏襲派の逆襲に遭い、教育委員会に『あの会長はしょっちゅう飲み会をして、朝まで連れ回されて困る』と根も葉もない中傷を流された会長がいました。本部役員の女性たちから完全無視されて、うつを患った方もいます」
会長以外の役員も、多くの犠牲を強いられる割には細々とした仕事が多い。もちろん、PTAに意義を感じて率先して参加する保護者もいる。最近はPTAの活動内容そのものが見直され、地域のニーズに沿った活動も多くみられる。
だが、共働きが当たり前になり親世代のライフスタイルが大きく変わる中、旧態依然の理不尽な負担を強いる「ブラックPTA」に疑問を抱く人は少なくないようだ。
※週刊ポスト2019年11月1日号