人民日報によれば、国慶節休暇中の銀聯ネットワークによる消費金額は、前半の6日間で2兆元を超えており、昨年の7日間の合計を上回った。中でも、夜間の飲食消費金額は55.5%増、娯楽関連消費は80%超の伸びとなった。
地域別でみると、飲食消費では、深セン、イボウ、広州など、娯楽関連消費では、深セン、海口、河源などで大きく伸びているが、その背景には高速道路の開通がある。大都市にアクセスする交通機関の整備がこうした夜間消費の活性化に繋がっている。
これは大型連休中の結果であるが、平日においても、深夜レストラン、深夜スーパー・コンビニ、深夜映画などの売上が伸びている。これは、供給サイドの企業努力によって、生活習慣に根差した消費が掘り起こされているからだといえよう。
意外なところでは、支払決済、信用貸出、保険といった金融サービス業の夜間取引が急拡大している。
金融サービス業では自由化が進み、インターネット系の参入が相次いでいる。伝統的な金融機関の営業時間は9時~17時であるが、多くのインターネット系企業は24時間、サービスを提供している。新規参入者は積極的な顧客開拓が不可欠であるが、相対的に自分たちの強みである夜間サービスに注力しており、それがシェア拡大に結び付いている。人民日報によれば、ネット銀行による消費者ローン業務の申し込みは19時から翌日6時までが全体の26%以上を占めるそうだ。
多くの日本人にとって、中国は規制の多い国だといった印象があるかもしれないが、実体経済ではむしろその逆であることが多い。当局が自由な競争を担保することで、いろいろな産業でイノベーションが起きようとしている。夜間消費はその一例に過ぎない。健全なイノベーションが第三次産業の発展を加速させることで、中国の成長率はそれほど減速せずに済む可能性もありそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。