子どもの名前に流行り廃りがあるのは、日本だけのことではない。タイでは近年、本名ではないがニックネームで日本に関連した呼び名が増えてきているという。
タイ人同士の会話を聞いていると、「プロイ(宝石)」「プー(カニ)」「ソム(オレンジ)」などの名前でお互いを呼ぶ合う場面に出くわす。本名だと思いきや、ニックネームだという。実はタイでは本名を名乗ることはほとんどなく、知らないままで過ごす場合も珍しくない。
そもそもタイ人は、本名とは別にニックネーム「チューレン」を持っている。本名は僧侶につけてもらったり、仏教の経典などからとられたりしているため、長く複雑で、発音が難しい。チューレンは、それを簡略化する目的がある。あるタイ人女性・Aさん(30代)によれば、それ以外にも「生まれた赤ちゃんを悪霊から身を守るため、“人”だとわかる名前をつけないようにする」といった伝統的な理由もあるのだという。
そんなチューレンは、親が子どもにつけるのが一般的で、動物の名前や自然の名前をつけることがほとんどだったが、最近一部では異変が起こっているという。
「チューレンは『メーウ(猫)』『フォン(雨)』といった動物や自然系が多い。英語系のものもあって『バンク』『アイス』『ビア』なども人気です。最近は日本にまつわるチューレンを持つ人も増えています。ちなみに、自分のチューレンが気に入らなければ変更もできます」(前出のAさん)
30代のタイ人女性・Bさんは、大好きな日本のアニメと俳優名の一部を参考に、自分の子どもにチューレンを名づけた。
「『ちび』と『いっき』です。ちびは『美少女戦士セーラームーン』のキャラクター『ちびうさ』から取りました。子どものころよく見たアニメで、可愛くて大好き。いっきは日本のかっこいい人気俳優から取りました。人気者になってほしいなと思います」(Bさん)