しかし、酒蔵によってはその序列が覆ることもある。明治20年創業の蔵元「永山酒造」(山口県)の5代目社長・永山純一郎氏が言う。
「うちで一番高いのは『大吟醸』で、『純米大吟醸』のほうが安い。大吟醸は日本酒コンクールに出品するために作ることが多く、香りを保たせるためにわずかな量のアルコールを添加するケースが多い。コンクールで大吟醸が賞を獲れば付加価値が付き、場合によっては純米大吟醸の倍くらいの値段がつくこともあります」
日本酒の特定名称は、味や品質の格付けというよりも、原料や製法の違いを表わしていると考えたほうがよさそうだ。飲むシーンや目的により、相応しい酒は変わってくる。
「吟醸酒は華やかな香りが特徴、純米酒は米本来の味わいが楽しめる、本醸造酒はスッキリ、などそれぞれに特徴があります。料理によっても合うお酒は変わってきます」(日本酒造組合中央会の広報担当者)
前出・永山氏は、意外な好みを明かす。
「純米大吟醸などは香りが強く、食事と合わせるというよりはお酒だけで楽しむようなものが多い印象です。純米酒や吟醸酒に比べるとリーズナブルなのが本醸造酒ですが、リラックスしたい時に焼き鳥屋さんなどでお燗した本醸造酒を飲むとホッとします。年を取ってくるとリーズナブルな酒のほうが若い時を思い出して懐かしくていいんですよ」
※週刊ポスト2019年12月6日号