中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

日本人に蔓延する「値上げアレルギー」「コスパ信仰」のさもしさ

 同業者で価格据え置きやむしろ安くしてしまった企業はチキンレースを仕掛けているような側面もあるでしょう。値上げした側が音を上げるのを待っているのです。その間、「ハンバーガー1個売って3円の利益しか出ないよ~!(悲鳴)」みたいな状態になるも「お客様を囲い込まなくては……」なんてことからこの痛みに耐えて頑張り続ける。貴乃花か!

 大体、安いモノに群がる客なんて、企業にとってのロイヤルカスタマーになるわけがないんですよ。そういう人はとにかく安さ重視で、もう座右の銘は「コスパ最高」だと宣言してこの言葉を墓石にも刻んでくれよナ、なんて思っている。

 そんな人々は「お客様」でもなんでもない。ただ単に自分の財布を痛めず腹いっぱいになりたいだけ。「通りすがりの人」でしかない。そういった客よりも、値上げをする場合はその理由を理解してくださり、「値上げしたけどオレはやっぱり○○の牛丼が一番好きだな~。マジうまい。週1回は食べたい!」みたいにツイッターに書いてくれる客の方向を向くべきだと思います。

 それができないのであれば、ずっと値下げの消耗戦をやり続けるしかないでしょう。もう日本の企業がそれしかできないのなら、かつての「値上げは普通のこと」という感覚に戻れない状態にあるとも思います。

 この25年ほど、値下げこそが「お客様のため」「当社の生き残りのため薄利多売で!」という旗印になっていただけに、完全に消費者も企業もこの考えに染まってしまっているのではないでしょうか。

外国人が「日本は安いね!」と喜ぶ様を見てどう思うか

 冒頭で2010年の牛丼業界の仁義なき戦いについての話を書きましたが、当時、東洋経済オンラインにはこんな記事も掲載されました。

〈緊急提言!「牛丼戦争は停戦を、吉野家はプレミアム化せよ!」《それゆけ!カナモリさん》〉

 タイトルから内容は予想できるでしょうが、ここでは筆者の「カナモリさん」が、こう提言しています。

〈筆者が「牛丼戦争停戦」を提唱するのは、吉野家を守りたいからではない。誰も儲からない不幸な戦いの果ての「牛丼業界」を心配するからだ〉

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