●武藤正樹氏(国際医療福祉大学大学院教授・施設派)
国は在宅医療・介護へのシフトを急進しているが、在宅介護で“幸せな最期”を迎えられるというのは幻想だ。インフラ整備は未だ道半ばで、看多機(*注)は全国約400か所、24時間定期巡回・随時対応サービスは900か所程度だ。必要なサービスが受けられず、介護をする家族が疲弊するケースが目立つ。
【*注/看護小規模多機能型居宅介護=24時間、365日、看護師が常勤し、看護と介護サービスを行なう事業】
費用を抑えられても、家族の負担は増え、見守りも手薄になる。
厚労省推計によれば2025年の認知症患者は700万人超。自宅でのケアや見守りが行き届かず、患者が徘徊するようになれば、死亡事故や失踪による「異常死」が激増する。2030年には、自宅でも病院でもない「路上」や「山・川」で最期を迎える高齢者が、47万人に上るとの推計もある。
現実とリスクを直視しなければならない。
※週刊ポスト2020年1月17・24日号