2020年(確定申告は2021年手続き分)から、個人所得の計算に関する控除の内容が変わり、扶養親族のいない高所得者ほど税金を多く取られる傾向になる。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは言う。
「会社員などの被雇用者は、額面年収から経費にあたる『給与所得控除』、誰もが一律に受けられる『基礎控除』などが引かれ、課税所得が出ます。そこから所得税や住民税などの税額が決まります。今年から、この基礎控除が増え、給与所得控除が減るわけですが、結論として、額面年収850万円以下の会社員は何も変わりません。一方で、例えば、額面年収1000万円(所得税率20%)で、特定の扶養親族がいない会社員の場合は、年間4万5000円、税負担が上がります」
年間4万5000円の税負担増となる仕組みを見てみる。額面年収1000万円(所得税率20%)の会社員の場合、改正前は控除額が258万円(基礎控除38万円+給与所得控除220万円)だったものが、改正後は243万円(基礎控除48万円+給与所得控除195万円)になり、年間15万円控除額が減る。そのため、所得税率20%(住民税10%)の場合、4.5万円(15万円×30%)の増額になる。
増税のボーダーラインは、2019年まで「額面年収1000万円」だった。それが「850万円」に下がったのが、今回の改正のポイント。高収入世帯から、税金を取ろうという狙いだ。では、年収850万円を超える会社員が損をしないためには、どうすればよいのか。社会保険労務士の井戸美枝さんに聞いた。
「まずは、自助努力で税金を減らすことです。例えば、『個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)』や『企業型確定拠出年金』をしていれば、掛け金が丸ごと所得控除となり、目先の税負担は減りますし、加えて、将来もらえるお金を積み立てられます。また、実質2000円の負担で豪華な返礼品をもらえる、『ふるさと納税』も、納めた額から2000円を引いた額が所得控除となり、返礼品をもらいながら税負担を減らせます」(井戸さん)