中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

大人の「1000円カット」論争 最優先するのは身なりか時間か

 正直、仕事で忙しい人からすれば、「髪の毛ごときに3時間もかけて1万円以上使いたくない」と思います。それよりも仕事を片付けたいし、さっさと家で寝たい、と思うもの。さらに言えば、お金を節約したいというわけでもないんです。私の知り合いには「別に2000円でも、早く終わる方に行く」と言う人もいます。

今回の論争は、まさに価値観の違いで分かり合えない者同士の意見のぶつかり合いです。髪の毛を気にする人は「10分でさささっと終わらせる感覚が分からない」と思うため、意見の一致が見られるわけがないのです。

1000円カットに通う女性の声

 以前少し驚いたのが、平日の夕方に渋谷の1000円カットへ行ったところ、並んでいる客4人全員が初老の女性だったことです。冒頭のはてな匿名ダイアリーの書き込み者は「子供か老人」がターゲットだと思っていたのと同様に、私もこれには驚きました。

 しかし、その晩、馴染みのスナックに行くと70歳超のママが「私も1000円カットに行ってるわよ。多分、そのお客さんは私みたいに店やってる人なんじゃないの? この年になるともう髪の毛なんて気にしなくなるけど、身だしなみは整えないといけないから、ああいう店が丁度いいのよ」と語っていました。

 今回の論争で少し微笑ましかったのは「子供が行くと思っていた」という書き込みに対し、「オレは息子には高い店に行かせている。オレはどうでもいいから1000円カットに行っている」という書き込みでした。これは息子思いのお父さん、といった感じがしますね。

 あと、1000円カットで働く人に、働く理由について聞いたらこう答えました。

「以前はおしゃれな店で働いていたけど、結局オーナーが一番儲かって我々下々の者は『キミ達の将来の独立の時は邪魔しないからさ。今は修行の時代だ』みたいなことを言い、安月給でこき使われます。1000円カットの方が給料がいいんです。あと、個人経営の店は従業員同士のマウンティングもあるし、そもそも、僕、お客さんと喋るの苦手なんですよ」

 なるほど、納得できます。

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