本来、労働者を守るためにある労働法を“抜け道”のようなやり方でゆがめている雇用者が存在する。「固定残業代」と呼ばれる制度を悪用してパートやアルバイトの残業代を支払わずに済むようにする例や、悪質なケースでは、知らない間に「個人事業主」にされ、本来受けられる社会保障を一切なくされているケースもあるという。
こうしたトラブルに遭わないためには、働く側も受け身ではなく自衛していくことが大切だ。もし未払いに遭ったら、どのように対処するべきだろうか。
未払い給料などの労働債権は、今年の4月から改正民法が施行されることを受け、2年間の時効が当面は3年間に延びるので、3年間さかのぼって支払いを求めることができる。仮に時給1000円で、着替えや片付けなどで毎日30分程度のサービス残業を行っていたとしたら、週5勤務の場合、3年間で約10万円もの未払いを請求できる。
明らかに不当な未払いを受けている場合は、泣き寝入りせず、一日でも早く行動を起こした方がいい。労働組合「首都圏青年ユニオン」の結成に携わり、さまざまな労働問題に取り組んできた労働運動家の河添誠さんが語る。
「まだ働き続けている場合は、直接社長に訴えるのがいちばんいいのですが、ひとりで会社と交渉するのは簡単ではありません。ひとりでも入れる労働組合を通じて交渉する手もあります。また、労働基準監督署(労基署)を活用することも有効でしょう。その場合、事前に賃金未払いの証拠をそろえて、労基署に『労働基準法違反の申告に来ました』と明確に伝えることが重要です。
とはいえ、労基署が万能なわけではないので、労基署を活用するにしても、まずは労働問題に詳しい専門家に相談することをおすすめします。無料で電話相談に乗っている労働組合(連合や全労連など)や日本労働弁護団などがあります。決してひとりで問題を抱えず、早めに専門家に相談してください」