制度そのものよりも、社会全体で子供とその親を支えるという意識が欠如していることを実感する。こうした“あるある話”は、枚挙に暇がない。しかも、パートなど非正規雇用の場合、そもそも育休という制度そのものを取得できない人が多いことも忘れてはならない。
2016年に「保育園落ちた日本死ね」という匿名ブログの投稿で話題を呼んだ、待機児童問題はどうだろうか。
厚労省の「保育所等関連状況取りまとめ」(2019年4月)によれば、待機児童数は前年比で3123人減少した。しかし、政府が掲げる「待機児童ゼロ」が目標期限の2020年度末までに達成できるかは微妙なところだ。
厚労省調査によると、待機児童の87.9%が0~2才の低年齢児。最も手のかかる年齢の乳幼児を保育所に預けることができず、キャリアと収入を犠牲にして、肉体的にも精神的にも負担の大きい自宅での子育てにひとりで励む女性の姿が浮かび上がる。
結婚や出産によって、本来手に入るはずの収入や築き上げたキャリアを失いかねず、産休や育休を取得して育児をしようにも、退職や待機児童のリスクがある──そうした現実を知るからこそ、多くの女性は子供を産まなくなったのではないだろうか。
女性の働き方に詳しいジャーナリストの中野円佳さんが指摘する。
「男性の収入が減るなどして共働きが当たり前となるなか、出産後のキャリアや、育児の負担に見通しが持てないことに不安を抱く女性は多い。決して子供を望んでいないわけではないのに、将来の不安から結婚や出産に踏み切れず、ずるずるとタイミングを逸してしまう女性も少なくないでしょう」
これが令和日本の現実なのかもしれない。
※女性セブン2020年2月13日号