また、コロナ騒動であらためてスポーツジムに通う高齢者の多さが浮き彫りになりましたが、そもそもなぜ彼らはジムに通うのでしょうか。私の知り合いの70代男性はジムに行く理由をこう語っていました。
「ジムに行けば知り合いがいるからさ、楽しいんだよ。あと、でかい風呂とサウナがあるんだよね。今までは銭湯でサウナに入っていたけど、ジムだとシニア割りとかもあるし、銭湯にいくよりもむしろ安いんだよね。ジム様様だよ」
かくして日中のジムは高齢者のサロン的な場になっている側面もあるようです。そうなると、一斉休校で子供たちの行動が規制されたうえ、平日の日中も面倒をみなければならなくなった母親たちからすれば、あくまでも娯楽のためにアクティブに活動する高齢者が許せなくなります。前出のAさんの言葉です。
「なんで子供だけが外に出られず、感染源みたいに思われているのか本当に意味が分かりません! 私だって学校が休みになったせいで仕事を休まなくてはならないし、リモートワークをせざるを得なくなっている人も多い。それなのに周りのことを考えず、自分の楽しみばかり優先させる高齢者が目立っている。本当に今、私たちのLINEグループでは高齢者に対する罵詈雑言だらけです」
そもそも高齢者は年金を60歳から満額もらっているのに対し、若い世代は将来的にあまり年金に期待できないこともあり、世代間格差を恨む声は少なくありません。昨今では、「保育園を建設しようとしたら地元の高齢者から反対運動が発生した」といった報道を目にすることもあり、高齢者の「自分ファースト」の考え方に違和感を持つ人も増えています。
また、昨年4月に発生した「池袋暴走事故」では、当時87歳の男性の運転する車によって、若い母親と小さな女の子の命が奪われました。ネットではこの男性に対する怒りが過熱し、「老害」「上級国民」などと多数書き込まれ、高齢者批判の潮流を活気づけました。
そうした中で発生した今回のコロナ騒動では、ますます世代間の分断が広がる由々しき事態となっているのではないでしょうか。かつて『三国志』に登場する曹操は「余は老人が好きだ」と述べたといいます。その根拠になっているのは、長生きをしているから善行をしていたに違いない、といった考えからでした。曹操のこの考えは現代日本ではもはや風化した考えになってしまったのでしょうか……。