年金だけでは生活できない時代に退職金は「老後資金」の大きな柱だ。だからこそ、全額を一時金でもらうより、分割(退職年金方式)でもらって年金の足しにするほうが安全確実と思っている人が多い。
機械メーカーを退職したA氏(69)はその1人。約2000万円の退職金を65歳から75歳まで10年の毎月払い(月額約16万6000円)の分割で受け取っている。
「定年後もしばらく嘱託で働いたから収入があったし、一時金でもらって定期預金したところで利息はほとんどつかない。それなら分割の方が老後の資金計画が立てやすいと考えたんです」
65歳からは厚生年金(約16万円)と退職年金をあわせて年収400万円ほどになった。妻の年金もあるから、無理して働かなくても夫婦2人食べていける。いい選択だったと思っている。
唯一、不満なのは、年金通知を見るたびに天引きされる税金や健康保険料が増えて負担が重いと感じることだという。だが、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの“年金博士”こと北村庄吾氏は指摘する。
「A氏は全く気づいていないようですが、退職金のもらい方を間違えたために、450万円近くも損しています」