医療費が無駄になりがちな行為の筆頭が「ハシゴ受診」(重複診療)だ。1人の医師の診療に安心できず、同時にいくつもの病院や別の医師のもとへ通うことを指す。
たとえば評判がいいからと治療中に病院を変えると、当然、訪れる病院の数だけ初診料と診察料がかかる。さらに、お金だけではなく診断結果の蓄積や情報の共有ができないため、使った時間も無駄になる。
ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は「基本的に健康保険でハシゴ受診は原則禁止です」と前置きした上で、さらに複数の診療科にかからなくてはならない場合、初診と再診の仕組みを知っておくべきだと言う。
「多くの診療科を持つ大きな病院の場合、同じ日に複数の診療科を受診すれば、2つ目の診療科の初診料は半額、3つ目以降は初診料が発生しません。風邪と腹痛で違う病院に行くくらいなら、同じ日にひとつの病院内で複数の診療科を回る“院内ハシゴ受診”をすれば、初診料の負担を減らせます」
これは大きな病院ならではのテクニックだが、一方で200床以上の大病院に行く場合は注意が必要だ。紹介状のある・なしで医療費が大きく変わるからだ。
大病院では初診料・再診料に加えて、「選定療養費(特別料金)」があり、地域の診療所でかかりつけ医から紹介状をもらわないと余計なお金がかかる。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「紹介状なしで200床以上を有する大病院に行くと、初診で5000円以上、再診については2500円以上を徴収されます。再診ではこの金額がかかり続けるため、紹介状を持たない患者には大きな負担がのしかかります」