「お小遣いは決して多くありませんでしたが、本は好きなだけ買ってもらえ、映画も見たいと言えば必ず見せてくれました。その代わり、本や映画がどんな内容だったのかを、両親に説明しないといけません。内容をしっかりと把握し、なおかつそれをきちんと言葉で伝えられる能力が養われたのは、とても良かったと思います」
放任主義の中にただひとつの厳しいルール
ピンポイントで厳しく教育されたというパターンもある。Sさん(30代男性/鉄道)の家庭は基本的に放任主義だったが、ある一点に関してだけは厳しかった。
「両親が共働きだったので、夏休みは1日中テレビゲームをしていましたし、学校の成績についても一切何も言われませんでした。ただ1つだけメチャクチャ怒られるのが、米粒を残すこと。悪さをして警察のお世話になった時も大して怒られなかったのに、米粒を残すと猛烈に叱られるので、今でもどんなに急いでいても、米粒は絶対残しません」
食事に関しては、こんな人もいる。Iさん(30代男性/印刷)は子供の頃に受けた教育により、包丁さばきが大変巧みだ。
「ウチの父親は、学校の成績や部活などにはまったくの無関心でしたが、『男も包丁を使えなきゃいけない』というのが口癖で、小さい頃から包丁を使わされ、じゃがいもの皮むきだの、キャベツの千切りだのを毎日のようにやらされました。今でも食事はだいたい自炊していますから、一応、役に立ったんですかね」
Uさん(40代女性/通信)の場合、教育方針らしきものは恋人に関するものだけだった。
「私はきょうだいの中でただ1人の女の子だったので、基本的にすごく甘やかされて育ったのですが、口うるさく言われたのが彼氏のこと。『恋人が出来たら、必ず家族全員に会わせる』というのがルールで、高校の時に初めて彼氏が出来て以来、今の夫まで全員、家族に会わせています」
今なら携帯電話があるので、隠れて付き合うこともできそうだが、当時の連絡手段は家の電話のみ。「あの人はやめなさい」などと言われたことは無いそうだが、ヘンな男に引っかかる可能性は減らせそう。その他、「とにかく、一切何も言われなかった。大人になってみると、それが良かったのか悪かったのかわかりません」(40代男性/塾講師)という例もあるが、家の数ほど教育方針があることだけは確かなようだ。