帝国ホテルで修業を積んだ70代のオーナーは客に対しても厳格で、マナー違反があれば臆することなく注意するという。
「お代も安くはないですし、愛想が悪くて高い店だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね」
だが、それでもいい、それがいいんだという客が集まってくる。この日の会計は3杯で7020円。決して大衆的な店ではなく、趣味嗜好性の高い空間なのだ。合う人には最高の店なのだから“低評価=ダメな店”と判断するのは早計だろう。
続いて、首都圏の繁華街にある居酒屋Z。口コミでは飲み放題で入店したという客が、「ドリンクが薄い」と指摘する。店員の提供時の態度にも批判が向けられている。
試しにビールを注文すると……ん、確かに薄い? 女性店員に聞くと、「これはビールですよ」と言い切ったが、食い下がると厨房に消え、しばらくして戻ってきた。
「失礼しました。キッチンの者がビールの管をつなぎ間違えていました」
うーん、本当にうっかりミス? チキン南蛮のソースはタルタルではなくマヨネーズ。刺身盛りはマグロが切れておらず、箸でつまむと全部つながっているなど、ツッコミどころは多数。口コミについて店長に聞いた。
「そんなサイトがあるとは知りませんでした。当店は5月から運営会社が変わっているので、社員もアルバイトも全員入れ替わっているんですよ」
古い口コミは、自分たちとは無関係だというのだが……。
一部のクレームである場合も、あたかも利用者の総意のように見えてしまうことがあるのが、口コミサイトの怖いところ。個性の強い店や個人経営の店ほど、賛否両論の極端な口コミが集まりやすい傾向があるようだ。
●西谷格と本誌取材班
※週刊ポスト2020年7月10・17日号