戦中は東京大空襲で灰燼に帰し、仲見世は闇市になった。時代に翻弄されながらもたくましく再興し続けたわけだ。
「江戸や明治の時代にも疫病の流行はありました。ただし当時は疫病除けのため人々が神社仏閣に足を運ぶ時代。おそらく寺は賑わったのではないか。浅草寺は1400年といわれる歴史の中で、初めて“人が来ない”危機を迎えているのかもしれません」(岡本氏)
家賃値上げとコロナ禍のダブルパンチについて、仲見世商店街振興組合に話を聞こうとしたが回答は得られなかった。組合関係者が明かす。
「高齢を理由に店をたたむ人はあったが、家賃滞納とか値上げが理由の撤退は聞かない。むしろ深刻なのはコロナ禍の長期化。このままインバウンドが戻らなければ大家の浅草寺さんも大変なんじゃないかと思って、こちらが心配している」
浅草寺にも家賃の減免や延納などの要望を受けているかどうか、また寺の経営状況についても聞いた。
「個々の契約についてはお話できないが、今のところ動きはない。この状況が続けば、お賽銭をはじめとする寺の収入も大変です。毎日3回ある定期法要で疫病の早期終息をご祈願しております」(浅草寺土地部)
この危機を乗り越えれば、浅草寺の長い歴史のひとつに「コロナ禍」が刻まれることだろう。