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コロナ禍の夏の電車内 窓開放でも暑くならない凄い空調能力

コロナの感染拡大を防ぐため窓を開けて運行するJR山手線(写真/時事通信フォト)

 本格的な夏を前に、新型コロナウイルス感染者数は全国で拡大し続けている。鉄道各社は「三密」を避けるため、電車の窓を開けるなど換気を徹底しているが、それによって冷房が効かず車内が蒸し暑くなり、熱中症リスクを心配する人もいるかもしれない。コロナ禍の夏に気になる鉄道の空調能力について、鉄道ジャーナリストの梅原淳さんが解説する。

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 今年もまたクーラーの恋しい季節がやって来た。冷房が効いた電車内は夏の火照った身体を冷やすのに最適だ。しかし、今年は換気のため窓を開けて運行するため、夏の電車内は蒸し風呂状態になるのでは、と心配する人も少なくない。だが、結論から言えばその心配は無用。なぜなら、首都圏を中心とした各鉄道会社は、たとえ窓を全開にして運行し続けても、それを上回る大規模な空調設備を備えているからだ。

 そもそも都市部の主な電車は、数分走ると駅に着き、1両当たり3~4か所の扉が一斉に開くといった流れを繰り返すため、車内は冷えにくく、暑くなりやすい環境にある。さらに、国で定められた車内の換気基準は非常に厳しい。窓や通風口を使って行う自然換気の場合、窓などの開口部の面積の合計は車両床面積の20分の1以上としなければならない。また、換気装置を使う場合は、1人1時間当たりの換気量を13立方mとし、換気量は乗客定員の2倍以上とすることが求められている。

 この状況をたとえるなら、「屋根だけあって壁のない部屋」を冷やしているようなもの。鉄道各社は、この厳しい基準をクリアするため窓や換気装置に加え、クーラーの外気導入をフル稼働して換気しているのだ。

 その冷房能力もとてつもなく大きい。例えば山手線の車両の場合、1両当たりの床面積はおよそ54.6平方mなのに対し、クーラーの冷房能力は58.14kW。一方、空調メーカーのダイキンによると、山手線の車両と同じ床面積の飲食店向けに適したクーラーの冷房能力は最大11.2kWだ。焼肉店やお好み焼き店のように、いかにも暑くなりそうな飲食店向けにさらに大きなクーラーを選んでも、冷房能力は最大14.0kWに過ぎない。

 つまり、山手線の車両に搭載されたクーラーは、同じ床面積の飲食店向けのものと比べて4倍余りの冷房能力を備えている。逆に言えば、これだけの冷房能力がないと車内の温度は下がらず、換気も出来ないのだ。

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