近ごろ全国各地で地震が頻発しており、いつ来てもおかしくない「首都直下地震」。首都圏には3000万人以上が暮らしているが、これほど人口が密集した都市への大地震直撃を人類はまだ経験していない。「必ず起こる」といわれる巨大地震にどう備えるか。今回は東京都渋谷区・中野区・杉並区の詳細な「ハザードマップ」をお届けする。
渋谷駅は「谷」の中心に位置する
渋谷には、その名の通り深い谷底が複数存在し、渋谷駅は谷の中心に位置する。関東学院大学工学部総合研究所の若松加寿江さんが解説する。
「渋谷川や宇田川の旧河道は、台地から深く掘り込まれた急斜面の谷底にあり、あまり蛇行していないという特徴があります。そのため、杉並区や中野区を流れる河川と比べて水が停滞しにくく、渋谷区内では川の沿岸に湿地や溜池はできませんでした。このため、軟弱層が堆積しているのは川の周囲100mほどしかなく、あまり厚くありません」(若松さん)
つまり、渋谷区の谷底底地は比較的地盤が良好で、揺れにも強いと考えられる。ただし、台地の表面を覆う「関東ローム層」は火山灰でできているため、一度崩れると元のように締め固まらないという性質を持つ。
「斜面が多い渋谷では、建物を建てるために土地を切り崩し、その土を盛って地面を平らにした区域も多くあります。そういった場所は大地震が起こると盛土の部分が崩れ落ちるリスクが高いといえるでしょう」(若松さん)
表面にこけなどの植物が生えていたり、水が染み出している擁壁(ようへき)は、擁壁の背後に地下水がたまっている証拠。崩れやすいため、地震のときは速やかに離れるようにしたい。また、土地の所有者は事故が起きる前に擁壁の排水対策をすることが重要だ。
暗渠化した渋谷川上流と宇田川の合流地点である渋谷駅は、大雨のたび周囲の雨水が集まり浸水していた(地図内「A」参照)。現在は治水工事が整い被害は少なくなったが、万が一、震災時に雨が降っていたら地下へと流れ込む雨水に足を取られる危険がある。