人々の「パニック」が多くの犠牲者を出す
危険は地下街にもある。早稲田大学理工学術院教授の長谷見雄二さんはこう言う。
「地下駅や、その周辺の商業店舗で火災が発生する可能性は充分あります。もちろん、スプリンクラーなどの火災対策はされていますが、本当に危険なのは人々がパニックを起こし、人が人を押し倒す『群衆雪崩』が起こることです。有事のときこそ、冷静さを忘れないでほしい」(長谷見さん)
過去には、兵庫県明石市の花火大会で歩道橋に見物客が押し寄せ、11人も亡くなった事故(2001年)もあった。同様の騒動が首都圏の主要駅で起これば、被害者の数は比較にならないだろう。
神田川とその支流(善福寺川、妙正寺川 ※地図内「B」参照)沿岸には「腐植土層」が多くあり極めて揺れやすい。また、高円寺から新宿へと続く大久保通りは、旧・桃園川の谷筋の上を通っており、激しい揺れが予想される。
杉並区の「和田」という地名は川の湾曲を示す「輪田」が由来とされ、水害の危険を表す(地図内「C」参照)。現在、和田堀公園は善福寺川の氾濫を防ぐ「遊水池」になっている。かつて水田だった川沿いの湿地帯には、住宅や学校などが立ち並ぶ。
そして、関東大震災後、郊外を走る路線としていち早く開通したJR中央線。そのため、都市計画の整備前に住居が急増し、沿線は都内でも屈指の住宅密集地として火災や家屋倒壊の危険が指摘されている。台地のため地盤条件は下町より良好だが、老朽化した木造住宅が多いことから、中野・杉並エリアを「下町より危険」と危惧する専門家もいる(地図内「D」参照)。
※参考/東京都建設局「東京の液状化予測図 平成24年度改訂版」、東京都都市整備局「地震に関する地域危険度測定調査」、国土交通省国土地理院デジタル標高地形図、『首都大地震 揺れやすさマップ』(目黒公郎監修/旬報社)、『川の地図辞典 江戸・東京/23区編』(菅原健二著/之潮)
※女性セブン2020年8月20・27日号