自由におろせなくなる?
「預けておけば安心」と思われてきた銀行預金には手数料のほかにもリスクがある。みずほ銀行(旧・第一勧銀)OBでもある法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が指摘する。
「金利がほとんどつかない銀行預金には、物価上昇のリスクがつきまといます。現在、各国の中央銀行は金融緩和で大量の資金を世界中にばら撒いている。貨幣の流通量が増えれば、相対的に現金の価値が下がって物価が上昇するインフレのリスクが生じることになります。
現在の定期預金金利は0.002%程度で、100万円を1年間預けても20円の利息にしかなりません。たとえば年率1%のインフレになった場合、銀行に預けているだけでは、持っているお金の価値がどんどん目減りしていくことになります」
加えて将来的には「預金封鎖」まで囁かれるようになっている。
戦後間もない1946年、財政悪化に見舞われた日本政府は国民の資産を没収する預金封鎖を断行した。いくら何でも今の日本では考えにくいとはいえ、政府の債務残高(借金)は昨年時点でGDP(国内総生産)比237.7%にまで膨らみ、戦後の水準に近づきつつある。そこに新型コロナ対策が重なり、国債が乱発されている。
預金封鎖については、日経新聞電子版(6月24日付)で〈強制措置を念頭に置く必要がある〉と言及されたことも話題となった。
もはや銀行預金だけでは将来にわたって安心は手に入れられない状況になろうとしている。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏はこうアドバイスする。
「預貯金は、資産を増やすためではなく保管のために行なうもの。インフレリスクに強くないため、増やすなら、投資を前向きに検討しても良いでしょう。
たとえば2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災の影響で日経平均株価は1万円を大きく割り込む水準まで下げましたが、現在は2万円を超えています。投資には元本割れのリスクもありますが、中長期で見れば資産が2倍以上になる可能性もある。資産の一部を振り向ける検討の余地はあると思います」
※週刊ポスト2020年9月11日号