コロナ禍の中でも中国本土の航空会社の株価が底堅い。三大航空会社である国際航空(A株:601111)、南方航空(A株:600029)、東方航空(A株:600115)の中では、特に東方航空の値動きが良い。市場では、新型コロナ騒動が落ち着くといち早く乗り放題チケットを売り出すなど、積極的な顧客獲得戦略が評価されたようだ。
東方航空の年初来安値(修正株価、場中ベース、以下同様)は3月23日に記録した3.96元。その後、緩やかにリバウンドしており、戻り高値は9月9日の5.38元で、この間、35.9%上昇している。年初来高値は1月3日に記録した5.85元なので、まだ少し足りないものの、2019年の安値4.92元(2019年8月13日)については、すでに上回っている。9月14日の終値は戻り高値よりは少し安く5.15元で引けているが、チャートは崩れておらず、押し目の範囲内での下げである。
ただ、足もとの業績を見ると、回復はまだ覚束ない。中国は1月下旬からから4月にかけて、新型コロナウイルス対策として全国レベルで厳しい移動制限を行ったが、その影響から、業績は大きく落ち込んでいる。
2020年6月中間期の業績は57.3%減収、85億4200万元の赤字(前年同期は19億4300万元の黒字)となった。4-6月期は66.3%減収、46億900万元の赤字で、直近の状況は厳しい。
しかし、厳しい決算の中、注目すべき変化があった。旅客輸送容量の単位となる有効座席キロ(ASK。総座席数×輸送距離)をみると、中間期で国際旅客は▲68.2%減と厳しいが、国内旅客は▲43.9%減に留まっている。また、旅客と比べると貨物の落ち込みは小さく、貨物輸送容量の単位となる利用可能貨物郵便トンキロ(AFTK。総輸送容量×輸送距離)は▲34.1%減、主力の国際貨物に限れば▲24.0%減に留まっている。
前者の旅客輸送について、2019年12月期の決算をみると国内売上高が64.9%を占めており、国際業務よりも国内業務の方が収益ウエイトが高い。中国国内では既に新型コロナの流行封じ込めに成功しており、人の移動制限が緩和されつつある。秋の旅行シーズンにはこれまでの反動もあり、国内旅行需要の回復が大きく進むとみられる。そうした見通しからアナリストたちの予想は楽観的となっており、2020年12月期業績の市場コンセンサスは35.9%減収、61億3100万元の赤字、下期では15.7%減収ながら、92.6%増益を見込んでいる(中国株データベース・同花順より。9月14日現在)。