田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国の「一帯一路」戦略は着実に加速している

中国と“一帯一路”国家・地区の定期貨物便は大幅増

 後者の貨物輸送について、貨物サービスの売上比率(2019年12月期)は3.2%でしかない。客運サービスが91.3%を占めるといった収益構造なので、貨物サービスがいくら増えても収益に与える影響は小さい。しかし、国際間の荷動きの変化は、国家間の貿易上のつながりの変化を表している。

 その鍵を握るのが、中国政府が推進する「一帯一路」戦略だ。中国中西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、中国沿岸部と東南アジア・インド・アラビア半島・アフリカ東を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の2つの地域でインフラを整備し、経済・貿易関係を強化するといった大構想である。

 第2回「空中シルクロード」国際協力サミットが9月8日、北京で開催された。中国民用航空局の崔暁峰副局長の説明によれば、中国は現在、96の“一帯一路”国家・地区と政府間航空運輸協定を結んでおり、中国で新型コロナが蔓延していた時点においても、45の国家・地区と客貨物輸送定期便を保持していた。こうした定期便を通じて“一帯一路”国家・地区に支援物資を提供し、支援物資は累計で1700トンを超えている。

 現在、中国と“一帯一路”国家・地区における1週間当たりの定期貨物便は1068便で、新型コロナ発生前と比べて2.6倍に達している。「この定期貨物便は、“一帯一路”国家・地区と手を携えて新型コロナに打ち勝つための“生命の通路”であり“命運の絆”となっている」などと発言している。

 米中関係が緊迫化する中で、中国の一帯一路戦略は着実に加速しているようだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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