生きている間にお金を渡しておきたいなら
いざ遺言書ができたら、相続税対策もぬかりなく行いたい。年間110万円までなら相続税が非課税で申告も不要なので、計画的に贈与することで節税になる。しかし、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんによれば、実はほとんどの家庭がそもそも「相続税とは無縁」だという。
「相続税の基礎控除額は『3000万円+(600万円×法定相続人の数)』。たとえば、妻と子供2人が相続人の場合、遺産が4800万円までなら相続税は非課税です。実際、2019年に相続税が課税された人は全体の8.5%にすぎず、相続税がかからない人がほとんどなのです。わざわざ手間をかけて生前贈与する必要性は低いでしょう」(風呂内さん)
それでも、生きている間にお金を渡しておきたい気持ちはどうしてもあるだろう。
「生きている間にどうしてもお金を渡しておきたいと夫が言うなら、妻はその範囲内で受け取ってもいいでしょう。でも、毎年きっちり110万円ずつ渡すと“計画贈与”ってしまって、税逃れとみなされかねません。子供のマイホーム資金なら『住宅取得等資金の贈与の非課税枠』(最大3000万円)、孫の教育資金なら『教育資金の一括贈与の非課税枠』(1人1500万円まで)などがあるので、用途に応じて賢く使い分ければいい」(井戸さん)
最愛の夫に先立たれた後、自らが「幸せなひとり暮らし」を送るためにも、前もって「夫に何をやらせて、何をやらせないようにすべきか」をしっかり考えておきたい。
※女性セブン2020年11月26日号