今年の冬は、11月終わりまで北極振動の指数はプラスであった。つまり、北極の冷たい空気は極寒の冷蔵庫に閉じ込められていたわけだ。これが、11月20日に長野市、富山市、奈良市、八王子市などで最高気温が25℃以上の夏日となった背景だ。
ところが、12月2日になって北極振動の指数はマイナスへと転じた。北極の冷蔵庫の扉が開き、青森市や秋田市では月初からみぞれが降った。12月第3週に入ると冬将軍は本格化し、日本海側では東北地方から中国地方まで大雪となり、東京でも最高気温が10℃に届かない日が見られる。
年末年始に向けこの寒気はどうなるか。活発化するかどうかは、北極振動がいつまでマイナスかがポイントとなる。アメリカ海洋大気庁が公開している様々なシナリオでの予報では、12月第4週目にいったん弱まるものの、年末から年明けにかけてマイナスの傾向が再び強まると出ている。となると、年末年始に再び寒気が来ることが想定される。太平洋側に乾燥した強風が吹くことで、関東地方に晴天をもたらす主要条件のひとつが整うことから、初日の出が見られる可能性も高いのではないだろうか。
当然ながら、北極振動だけで日本列島の天気を予想することは出来ない。また、寒気の再来となれば、日本海側の豪雪災害も懸念されるため、一概に喜ばしいこととも言えない。もっとも、本年はコロナ禍でさんざんな年であった。2021年の元旦、太平洋に昇る初日の出を拝めたら、新しい年が良い年になるよう願いを込めたいものだ。
【プロフィール】
田家康(たんげ・やすし)/気象予報士。日本気象予報士会東京支部長。著書に『気候で読む日本史』(日経ビジネス人文庫)、『気候文明史』(日本経済新聞出版)他。