ネット通販が広く普及し、宅配便を受け取る機会が増えている昨今。一方で、海外から身に覚えのない荷物が届くケースもあるという。もしもそんな荷物が届いたらどうすればいいのだろうか。実際の相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
先日、突然、海外から荷物が送られてきました。私も家族も注文した覚えはありませんが、開封したら、あるブランドものにそっくりのアクセサリーでした。いまのところ、お金を請求されてはいませんが、商品はどのように扱ったらよいのでしょうか。伝票には海外の住所らしきものが書いてありますが、送り返すのも怖い気がします。警察に届けた方がよいですか。教えてください。(千葉県、47才・会社員)
【回答】
アクセサリーをあなたにあげる(贈与する)のか、売るのか、貸そうというのか、送り主の意図はわかりません。住所や宛名があなたでも人違いの可能性もあります。あなたはもらったり、買ったりするつもりはないので、送り主との間では契約は成立しません。しかし、あなたは配達されたものを開封し、一旦は手元にとどめたので、民法でいう「事務管理」を始めたことになります。
事務管理とは、契約等による義務がないのに、他人のために事務の管理をすることです。この場合は、送り主のアクセサリーを保管することです。民法では「事務管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない」責任があるとしています。そのため、善良なる管理者の注意義務をもって事務を行わなければならず、少なくとも預かり品として自分の物以上に気をつけて保管しなければなりません。アクセサリーが高価なものであれば、捨ててしまうわけにはいかず、迷惑なことです。
しかし、しばらく経っても何の連絡もなければ、送り主が送り先を間違えているのかもしれません。ところで、本人の意思ではなく、本人の占有を離れたもので盗まれたものではない物を「遺失物」といいます。あなたの例で、送り先間違いとすれば、本来の送り先とは違うので遺失物に該当するといえないこともありません。そう考えるとあなたは遺失物の拾得者です。遺失物法では「拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない」と定められています。遺失者が誰だかわからないのですから、警察署に届け出るほかありません。もし犯罪に関連するものであれば、警察に届け出る義務があります。結局、警察に相談するのがいちばんです。近くの交番で相談してください。