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介護保険料は値上げするのに介護分野のセーフティネットは縮小へ

特養入居者の補足給付が打ち切られる可能性も(イメージ)

特養入居者の補足給付が打ち切られる可能性も(イメージ)

 介護サービスの利用料が4月から値上げされる。厚労省はコロナの感染拡大で介護事業者の経営悪化や廃業が相次いでいることから、事業者に支払う介護報酬を増やす一方で、特養などの入居費やデイサービスの利用費の引き上げを発表した(1月18日)。

 これに伴って自治体が決める65歳以上(1号被保険者)の介護保険料も値上げされ、全国平均で現在の月5869円から、4月以降は月額6000円を超える見込みだ。厚労省は2025年度には保険料が月7200円まで上がると試算している。

 保険料と反比例するように介護分野のセーフティネットは縮小される。特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの「居住費」「食費」は原則自己負担だが、住民税非課税世帯には収入に応じて月2万2000円から6万9000円までの手厚い補助(補足給付)があり、特養入所者の8割が給付を受けている。

 だが、4月からは、非課税世帯でも年金収入が年120万円(月10万円)を超える人は、食費分の補足給付が打ち切られる可能性が大きい。そうなると、年間26万4000円の負担増だ。介護ジャーナリストの末並俊司氏が語る。

「特養の費用は自己負担分を含めるとユニット型で月12万から15万円と決して安くありません。収入が低い住民税非課税世帯は補助があるから入所できるが、月2万2000円もの値上げとなると、負担が重くて家族を退所させるしかなくなるケースが増えるでしょう」

 自宅介護で家族の負担を軽くするために短期入所(ショートステイ)させる場合の食費も、1日650円から1300円と2倍に引き上げられる。

 補足給付を受ける条件も厳しくなる。現行制度では預貯金などの金融資産が「1000万円以下」(配偶者との合計2000万円)だが、今年8月からは資産要件が「500万円以下」となるとみられている。

「政府は夫婦で2000万円の老後資金が必要といっていたが、これからは夫婦で2000万円の預金があると寝たきりになっても費用が高くて特養に入れなくなる可能性すら出てくるかもしれません」(末並氏)

※週刊ポスト2021年2月19日号

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