またしても起こった、みずほ銀行のATMでの大規模障害。今回は利用者のキャッシュカードや通帳が呑み込まれ、各地のATMコーナーは、怒声とため息に包まれた。なぜ、過ちは繰り返されるのか。
みずほ銀行では、第一勧業、富士、日本興業の3行が合併して発足した2002年4月と、東日本大震災発生直後の2011年3月に、大規模なシステム障害が発生している。
「統合の際、力関係がはっきりしていた三菱UFJ、三井住友と違い、みずほは3行が対等だと行内で主導権争いがあり、システムの一本化が難航。やむを得ず各行のシステムをつぎはぎで統合し、大規模障害につながったと考えられています」(第一勧銀OBで法政大学大学院教授の真壁昭夫氏)
その反省から、みずほはシステムの全面刷新を実行した。2度の延期で、「IT界のサグラダ・ファミリア」と揶揄されながらも、2019年7月に新システムへ移行。だが、三度目の悲劇が起きた。
金融ジャーナリストの森岡英樹氏は、「35万人月、4000億円を投じた新システムへの移行が終わり、組織が“慢心”して危機管理を怠ったのではないか」と指摘する。
2019年9月、三菱UFJと三井住友は、店外ATMを互いに開放する共通化をスタートしたが、みずほは参加しなかった。
「新システム移行を理由に参加しなかったとされています。移行後も参加できないのは、プライドの高いみずほが頭を下げて『入れてください』と言えないことや、2メガがみずほのシステムを完全には信頼していないことが考えられます。今回は、そうした危惧が現実になりました」(森岡氏)
加えて今回は、現場で預金者が立ち尽くす状況を招くという、危機対応の問題もあった。
「みずほ銀行など中核3社を横断するようにカンパニー長が配置された組織構造で、情報の伝達や意思決定に時間がかかったことも、緊急時の対応が遅れた要因ではないか。ガバナンスの不足でしょう」(森岡氏)