「“暖かくなってきたから、ちょっと買い物に行くときに軽く羽織れるものが欲しいわ”といった具体的な目的があるなら、それはムダづかいではありません。しかし、買ってしまってから“ちょうどこういう服が欲しいと思っていたところだし……”などと言い訳するようなら、それは『後知恵バイアス』。あたかも最初から予測できていたかのように思い込もうとする脳のクセなのです」
スーパーのタイムセールや、ついで買いしがちなコンビニのレジ横商品も、脳の性質を利用した「閉店時刻効果」を狙った戦略だ。
「タイムリミットがあると、その対象がより魅力的に見えるという人間の心理をついたものです。本来、理性的な判断は脳の前頭前野で行い、本能的な一瞬の判断は脳の中心部にある大脳辺縁系で行います。
つまり、前頭前野が“本当にこの商品は必要か?”と考える時間を与えないようにして、本能で購入するよう仕向けているのです」(杉浦さん・以下同)
「芸能人の○○が愛用」「ランキング1位」といったうたい文句に弱い人は多いだろう。これも、「自分に付加価値をつけたい」という人間の欲求を利用したやり方。芸能人と同じもの、誰もが欲しがるランキング1位のものを所有すれば、それだけで自分の価値が上がるように錯覚させる。
「特に、ストレスを抱えているときは、こうした商品を衝動買いしやすい。なんとかして自分をよく見せたいという欲求が高まっており、より高額なものを買ってしまう傾向があります」
菅原さんは、広告やパッケージにも、消費者を誘惑する仕掛けがあると話す。
「広告の持つイメージに引っ張られて、商品までよく見える心理のことを『ハロー効果』といいます。ハローとは“後光がさす”という意味。特徴的な一面だけに影響され、まるで後光がさしているかのように、ほかのすべての面もよく見えてしまう。特に、『3B』=Beauty(美人)、Baby(赤ちゃん)、Beast(動物)を起用したCMが多いのは、人はこの3つに魅力を感じやすいといわれているからです」