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グローバルダイニング「104円訴訟」で動いた巨大マネー

東京都の「時短命令」に真っ向反論(小池百合子都知事・時事通信フォト)

東京都の「時短命令」に真っ向反論(小池百合子都知事・時事通信フォト)

「モンスーンカフェ」「権八」などを展開する飲食店グループ「グローバルダイニング」が、東京都を相手取って起こした「104円賠償請求」の訴訟が話題を呼んでいる。“お金目当てではない”ことを前面に出した訴訟によって、巨額の資金が動いたというのだ。

 東京都は3月18日、緊急事態宣言下において営業を午後8時までとする要請に応じなかった27店舗に対して、「時短命令」を出した。対象のうち26店がグローバルダイニングの経営する店舗で、宣言が解除される21日までの4日間、同社は各店舗を8時で閉めた。そして、宣言解除後の22日、東京都の出した営業時間短縮命令は違法として、損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ。

 請求額は1店舗、1日につき1円。26店舗が4日間時短としたために「104円」となるわけだ。訴訟が“カネ目当て”ではないことをはっきりさせる目的があっての金額設定である。訴状では、「適切な補償もなく要請に応じれば経営維持は困難になる」「営業の自由への過剰な制約だ」といった主張がなされている。原告代理人を務める弁護士・倉持麟太郎氏はこう説明する。

「そもそも、政府が3月18日に宣言を解除すると言った後に、都が時短命令を出したことが疑問です。しかも、命令を出す理由として、(グローバルダイニングの長谷川耕造社長が)ウェブ上やSNSで発信したことを含めていますが、これは全く関係のないことで、表現の自由にかかわってくる。この人は政府に反抗的な言論をしているから時短命令を出したというのだから、当然問題でしょう」

「104円訴訟」の狙いは?(記者会見をするグローバルダイニングの長谷川耕造社長=中央ら。時事通信フォト)

「104円訴訟」の狙いは?(記者会見をするグローバルダイニングの長谷川耕造社長=中央ら。時事通信フォト)

 この訴訟を受けて、大きく動いたのが株式市場だ。23日は取引開始直後からグローバルダイニングの株が買われ、ストップ高となった。株価は前日終値の248円から328円へと急騰。売買代金(その日に取引された合計金額)は約87億7000万円で、前日の50倍以上となる巨大マネーが動いたのだ。カブ知恵代表・藤井英敏氏が解説する。

「時価総額30億円に満たないグローバルダイニングの株は、基本的には機関投資家の投資対象にはなりにくく、買いを入れた多くは個人投資家だったと考えられます。同社がそこまで計算していたとは考えにくいですが、もともとコロナで苦しい状況にあった外食産業が、宣言解除で反騰するのではないかと期待される状況があった。そうしたなかで都に対する訴訟の広告宣伝効果が大きかったものと考えられます。

 訴訟を応援するつもりで買いを入れた人もいるでしょうが、飲食業界が今なお先行き不透明なのは変わりません。訴訟をきっかけに、集客が伸びる可能性もあると考えられ、今後の株価は、業績がどう推移するかによって変わってくるでしょう」

「104円訴訟」の費用対効果は、一体どうなるのか。

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