一方で、こんな70代の男性も。
「妻曰く『粗大ゴミ』。悲しいかな、それが定年直後の私に下された評価でした」
そう語るのは、都内在住の栗原光男さん(70才)。栗原さんは50年間勤務した前職を68才で定年退職した。その後の充電期間中に妻から“不要物”扱いされるも、知人の紹介でシニア専門の派遣会社「高齢社」に登録し、現在は週2回、都内企業の倉庫業務を行っている。
「職場では息子世代とともに働き、休日は妻との畑仕事やジム通い、孫との外食などで、充実した第二の人生を過ごしています。申し上げた通り趣味が多くて貯金はたまりませんが、この先も気力や体力が続く限り、できるだけ長く働きたい」(栗原さん)
この2人に限らず、いま60才を超えても働くケースが増えている。
コンビニの揚げ物やおにぎり作りで生きる家事スキル
「企業がシニアの力に気がつき始めたんです」
そう語るのは、50才以上を専門にした人材仲介業を行う「シニアジョブ」代表取締役の中島康恵さん。
現在同社には4万5000社ほどの企業が登録しており、ニーズに合わせて求職希望者とのマッチングを行っている。コロナ禍にもかかわらず成立数は伸び続け、2021年は前年比1.5倍増が見込まれる。
「この年代のかたがたは敬語はもちろん基本的な仕事の流れや会社における人間関係などを理解しているため即戦力になるうえ、年の離れた経験者から若手が学ぶことも多く、社内教育が円滑に進むメリットもあります。さらにいまの高齢者は10年前より健康状態が良好。60才から雇ったとしても70才まで元気に働ける。今後、ニーズはますます高まるはずです」(中島さん)