定年を迎えた後に同社に登録して仕事を見つけ、60代にしてはじめての派遣社員として働き始めた建築施工管理技士の外山伊佐夫さん(63才)も「自分も含め、いまの60代はまだまだ元気」と語る。
「労働意欲があって体力的な面がある程度カバーできれば、若い人と一緒に問題なく活躍できます。意見を出す場面もありますが、定年前と比べたら率先してみんなを引っ張っていくというよりは、求められたときに意見を言うような立場です。『見守る』ことが多くなったように思います。
少子化でどうしても若い人は減っているわけだし、世代の違いもあって若い人が誰でもすぐに現場で活躍できるわけでもないので、そこはわれわれ60代がもっと建設現場を支えていかなければならないと思います」(外山さん)
人材サービス会社「アデコ」が2019年に働くシニア400人と人事担当者400人を対象に行ったアンケートでも、企業の8割以上が雇用にメリットを感じていると回答。
国もこの流れを後押しする。4月1日から、すべての企業に社員が70才まで働けるよう努力義務を課す「70才就業法」(改正高年齢者雇用安定法)が施行され、これまで以上に高齢者が長く働ける環境が整備されるようになるのだ。
実際、専門的な技術や知識を持つシニア人材を「マイスター社員」として採用してきた東急ハンズや、シニア世代のアルバイトや再雇用社員を登用するモスバーガーなど、積極的に採用する大企業は少なくない。
その1つが、国内に約2000店舗を持つコンビニ「ミニストップ」だ。
《一緒に働くスタッフは高校生や大学生がほとんどです。世代を超えた会話に最初は戸惑いましたが、若い子たちと「今日はポテトがよく売れたね」と会話をしたり、コーヒーマシンの洗浄方法を一緒に習ううちに自然とコミュニケーションが取れるようになりました。色んな世代のみんなが楽しく働ける職場って素敵だと思います》
これはミニストップで働くシニア世代の女性が、同社のホームページに寄せた感想だ。彼女は「家だけでなく社会に出ていたい。元気なうちは仕事は続けていたい」との思いからコンビニで働き始めた。
ミニストップ広報担当の篠原淳一さんが語る。
「シニアスタッフの持つ人生経験は会話や気遣いといった接客の面で大きな武器になる。お客さまのなかにはただ買い物をするだけでなく人とのつながりやコミュニケーションを求めているかたもいる。シニアスタッフの丁寧な応対を目当てにして常連さんになってくださるケースもあります」