かといって、住み慣れた家で暮らし続けたいと希望するひとり親のサポートにも困難が伴う。築年数が経過した家で高齢者がひとり暮らしをするとなれば、転倒防止のためのリフォームなどに費用がかかる。近くで様子を見てくれる親戚や知人、信頼できるかかりつけ医などがいるとは限らないし、訪問介護や訪問看護などの介護保険サービスを利用するにしても、上限額を超えれば自己負担が膨れあがっていく。子供が通いで面倒を見ようと思っても、遠方であれば、時間も労力も際限なくかかる。
母に先立たれた父の遠距離介護を経験した愛知在住の元銀行員(68)はこう話す。
「岐阜の実家までは、高速を飛ばしても片道1時間以上かかるので、毎日通うのはさすがに難しいと思い、ヘルパーさんを頼むことにしました。これで負担が減るかと思いきや、毎日のように父親から電話がかかってくるようになったんです。
最初は“知らない人を家に上げるのは気が引ける”といった内容だったのですが、そのうち“あのヘルパーは勝手にタンスを物色してお金を盗んでいった”とか言い出すようになった。妄想だとわかっていても、かわいそうで放っておけず、時間を見つけては実家に帰るようになった。なんのためにお金を払ってヘルパーさんを頼んだのかわからなくなり、本末転倒でした」
前出・結城氏はこう指摘する。
「介護サービスでヘルパーやデイサービスを頼んだとしても、結局は子供が身の回りの世話で1か月に1~2回は実家に戻ることになるケースが多い。ヘルパーやケアマネからは頻繁に連絡が入り、帰省のための交通費や仕事の調整のための負担も大きい。遠距離介護は想像する以上に大変だと覚悟しておくべきです」
※週刊ポスト2021年4月30日号