井戸氏は「ひとりになった親の介護費用の負担については事前の話し合いが重要」とも指摘する。
「よく『親の介護費用はいくらかかりますか?』と聞かれますが、考えなくてはならないのは“いくらまでなら払えるのか”です。まずは親の資産を把握し、何にどれだけ使うのかを家族の共通認識としておくべきです」
他のきょうだいからあらぬ疑いをかけられないためには、親のお金だけでなく、所有物の管理にも注意を払う必要がある。
同居の母が日本舞踊の“お師匠”をしていた59歳会社員がつぶやく。
「母は3年前に亡くなりましたが、その少し前から病床に伏せっていました。もう舞台に立てないので、母の希望も聞きながら着物や踊りの道具は人に譲りました。私は価値がよくわからなかったのですが、それなりに高価なものだったようで、母の死後に姉や妹から烈火のごとく抗議されました。生前は母の面倒をロクに見なかったくせにと腹が立って口論になり、いまだに関係は冷え切っています」
※週刊ポスト2021年4月30日号