5月も中旬に差し掛かり、柔らかな風が吹く心地よい季節がやって来た。コロナ禍の自粛生活が続くなか、暖かな陽気に誘われて散歩に出掛ける人も多いだろう。だが、日差しが強くなるこの季節、気になるのが紫外線だ。「まだ5月だから大丈夫」と思っている人は要注意。この時期の紫外線について、気象予報士の田家康さんが解説する。
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気象庁によると、東京の5月の全天日射量は、1平方メートルあたり平均16.2MJ(メガジュール)と、実は1年を通して最も多い。6月から8月の夏の日差しは強烈だが、5月と比較して曇りや雨の日も多いためだ。また、紫外線を考える時に注意したいのは、太陽の日差しを浴びた時に感じる体感温度とはズレがあること。地上に届く紫外線量に最も影響するのは、太陽の高度だからだ。
大気圏外の紫外線量は、我々が地上で浴びるものよりもはるかに多いが、オゾン層(正確には大気圏を漂っているオゾンや酸素)がそのほとんどを吸収してくれている。紫外線には3つの種類があり、短い順からUVC、UVB、UVAと区別される。このうちUVCは、オゾン層で完全に吸収されるため、地上では観測されない。日焼けして肌が赤く炎症を起こすことがあるが、この要因となるUVBもほとんどが吸収されるため、地表に届くのはわずかだ。身体への影響が少ないとされ、日焼けサロンにも利用されるUVAも、地表に届くのは半分程度である。
大気の層が厚いほど紫外線を多く吸収するため、地表に降り注ぐ紫外線も減少するが、太陽の高度によって層の厚さは変わる。地球は丸いことから、太陽が空の真上に来るほど太陽との距離が縮まり、紫外線を含む太陽の光が通過するオゾン層も薄くなるのだ。そのため、1日のうちで一番太陽が高くなる正午頃の紫外線量は突出して多くなる。地面が熱を蓄える効果から、1日のうち最も気温が高くなるのは午後2時頃だが、気温の高さと紫外線量は比例しない点には注意が必要だ。
自分のいる場所が太陽に近いかどうかでも紫外線量は変わる。例えば高い山の山頂など標高が高い場所にいる時は、オゾン層の吸収が少なくなり身体に浴びる紫外線量も増加する。標高1000メートル近くになると、紫外線量は地表に比べて10%も増加するのだ。高い山では夏場でも気温が低いため、紫外線への注意が散漫になる。ましてや、残雪が残っている場合は雪が太陽光を反射し、さらに多くの紫外線を受けることになるので注意したい。