健康で長生きするためには、どんな家に住むかという問題も大きい。たとえば冬場に多く、家の寒暖差が原因で心筋梗塞などを起こす「ヒートショック」という現象により、年間約1万7000人以上が亡くなっているといわれる。東京都立大学名誉教授で医師の星旦二さんがいう。
「古い住宅では風呂とトイレが屋外にあるケースも珍しくない。長野県で行われた調査では、それらを屋内に移したことで壮年脳卒中が激減したという報告があります」
冬場は「寒い家」がさまざまなリスクとなるが、夏は逆となる。「日当たりがよすぎる家」の危険について日本大学理工学部助教で一級建築士の井口雅登さんが言う。
「眺望がいいとして人気があるマンションの最上階は、屋上の熱が室内まで伝わりやすい。また、日当たりのいい角部屋も外界に面している部分が多いため、熱環境的には好条件とはいえません。夏も冬も、理想的なのは家の中の温度差が少ない家です。日射の熱に影響されやすい家はエアコンで温度をコントロールするのが困難で、熱中症になりやすい」
なぜ、日本の家がこれほど気温に左右されやすいのか、それは昔ながらの日本家屋は「断熱」が念頭になかったことが大きい。
「もともと、日本の家屋は夏の『通風』をよくすることを中心に考えられ、室内の温度を維持する『断熱』への意識が低かったのです。オイルショックくらいから『省エネ』という概念ができ、1980年に最初の基準ができました。断熱材を仕込んだり、二重窓にするなどしてエネルギー消費を抑えるようになったのは、比較的最近のことなのです」(井口さん)
同じ頃、耐震基準も大きく変わった。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんが話す。
「1981年に建築基準法改正がありましたが、それ以前に造られた建物は耐震基準がとてもゆるい。地震で倒壊する恐れがあります。また、1階が店舗、2階を住居にしているような家屋は1階部分を広く使うため柱が少ないことがあるので、倒壊の危険が高まります」