歳を重ねた時の不安として、大きな割合を占めるのが「お金」だ。日々の生活費はもちろんのこと、病院に行くにも、介護を受けるにも、住まいの修繕にも、お金がかかる。長生きすればするほど、死ぬまでに必要な金額は大きくなる。
では、「お金があれば安心」なのか。そうではない。むしろ“お金でなんとかなりそうだ”と思いがちな局面にこそ、落とし穴が潜んでいる。何十年もかけて蓄えてきた貯金や資産を失ったうえに、路頭に迷う事態をなんとか回避しなくてはならない。
苦労して蓄えたのに…
3年前、65歳で退職した男性は、妻と一緒に“地方移住”を選択した。多少の初期費用はかかっても、東京で暮らし続けるより生活費が安く済むから問題ないだろうと考えていた。しかし、男性は「考えが甘かった」と下を向く。
「転勤が多かったのでずっと賃貸暮らしでしたが、貯金は余裕があったので土地付きの中古の戸建てを1500万円ほどで購入しました。しかし、手数料や引っ越し費用、古くなっていた建物のリフォームなどで数百万円の費用がかかった。車がないと生活できないから、ガソリン代や車検代もかかるし、日用品などの物価も思ったほど東京と変わらない。
妻とは都市部にもう一度、引っ越そうかという話もしているのですが、それにもまたお金がかかる。安心して老後を過ごせる蓄えがあると思っていましたが、いまは不安ばかりです」
もう少し慎重に検討を重ねていれば、長年かけて積み上げた貯金を失わずに済んだかもしれない。