自らの資産を子供に渡すための「贈与」で失敗するケースもある。一昨年父親を亡くした都内に住む60代男性はこう話す。
「父は“毎年110万円まで贈与税が非課税”という仕組みを知って、数年にわたり私たち子供2人の名義の口座に100万円ずつ振り込んでくれていました。亡くなった後にそれを知って、ありがたいと思っていたのですが、後になって税務署から口座の管理まで父がやっていたのであれば“名義預金”にあたり、相続税を払わなくてはならないと指摘を受けた。相続税の申告漏れだということで、追徴課税されてしまいました」
会社員時代の給与や退職金、年金などの水準がまだ恵まれていた定年後世代は、現在の若者世代に比べて資産保有額も多く、決して「お金がない」わけではない。
それでも、失敗はある。実は「お金がない時の失敗」よりも「お金がある時の失敗」のほうが、安心をしていたぶん手痛い打撃となりがちだ。
※週刊ポスト2021年6月11日号