亡くなってから借金の存在が判明し、残された家族が右往左往するケースは多い。都内在住の60代男性は、父親の死後1年以上経ってから、叔父からの電話で借金の存在を知らされたという。
「父は私のマイホーム資金のために、ポンと1000万円出してくれたのですが、実はそれは叔父から借りたものだったんです。叔父は私が知っているものと思っていたようで、“そろそろ返してもらえないか”と、借用書を手にバツが悪そうに切り出しました。知らなかったと伝えると、叔父もびっくりしていました」
借金の相手は親類だけとは限らない。栃木県在住の67歳男性はこう話す。
「父が亡くなってから3か月半が経った頃、金融業者から『父親の借金を返せ』と電話がありました。利子が積もり、500万円ほどに膨らみ、父の遺産額を上回っている。しかも『3か月以上経っているから相続放棄はできないよ』とすごまれて、思わず足が震えましたよ」
知り合いの弁護士に「借金を知り得なかったことが立証できれば、知ってから3か月以内なら相続放棄できる」と教えられ、なんとか事なきを得たという。
なかには知らない間に近隣住民からお金を借りていて、「ご近所さんには“相続放棄したから、お金は返さない”とはとても言えない……」と遺族が頭を抱えるケースもある。
後から請求が回ってくるのは、借金だけではない。愛知県在住の50代女性は、昨年、フリーランスとして働く夫が心筋梗塞で急逝した。
「まだ50代だったので、まさか亡くなるなんて思ってもいませんでした。預金や生命保険、住宅ローンなど、遺産や負債を洗い出し、相続手続きを済まそうとした矢先、国税局から一通の通知が届いたんです。開けてびっくり、夫は税金を滞納していて、すでに納付期限が過ぎていた。結局、“息子の大学資金に”と思っていた生命保険の受取金が差し押さえられました。夫もまさか自分が急に死ぬなんて思わず、いつかまとめて払うつもりだったのでしょう」