真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

乱高下するビットコイン テスラ株との相関を“単純化”する投資心理

 世界中に溢れた資金は、株式市場のみならず暗号資産にも大量流入。奇しくもビットコインにバブルをもたらしたのはテスラだった。今年2月、テスラが15億ドルものビットコインを保有していることが明らかになると、ビットコイン価格が急騰。ビットコインを大量保有するマスク氏のTwitterでの発言が度々注目を集め、“ビットコインが上がるからテスラ株も上がる”というサイクルが作り出された。米国の金融市場では、「ツーといえばカー」と言わんばかりに、「イーロン・マスク→テスラ→ビットコイン」という連想ゲームが定着していったのだ。

 行動経済学では、このように「ざっくりと物事をつかみ」、「直感的に物事を理解」して意思決定することを「ヒューリスティック(heuristic)」と言う。ビットコインとテスラの連関性は、まさにヒューリスティックの極みと言えるだろう。

揺らぎつつあるテスラの優位性

 しかし、単純化された「ヒューリスティック」はいつまでも続かない。ビットコインは4月14日に一時700万円台まで上昇したが、テスラがビットコインによるEVの購入停止を発表すると暴落。その後1か月足らずで300万円台まで価値を半減させている。テスラ株も一時の勢いを失い、現在は600ドル台で推移している。

 なぜこうなったのか。ごく簡単に言えば、テスラ株もビットコインも実体とかけはなれて「高すぎた」のである。冷静に考えてみると、そもそも実体のないビットコインもさることながら、テスラの実績PER(株価収益率)は800倍を超え、異常なほど割高である。

 確かに、世界的な「脱炭素」の流れからEVの注目度はますます高まっているが、だからといってEVはテスラが独占しているわけではない。トヨタやVW(フォルクスワーゲン)、BMWやメルセデス・ベンツなど、世界の名だたる自動車メーカーがEVの普及を本格化しており、中国でもBYD(比亜迪)などのEVメーカーをはじめ、車載用電池最大手のCATL(寧徳時代新能源科技)などが台頭している。とりわけ世界最大の自動車大国となっている中国では、既にテスラ車の販売が頭打ちとなりつつあり、その優位性も揺らいでいる。

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