ただし、自宅を残し続けることにデメリットがあるのもたしかだ。将来、誰も住む人がいない場合には自宅の維持や管理の手間がかかり、相続時にはトラブルの種になりやすい。また、田舎の家では買い手がつかずに売却できないこともある。
そこで、折衷案として小谷氏は「子供と自宅の処分方法を話し合っておくとよいのではないか」と指摘する。
「子供たちは実家の処分にかかる手間や費用を気にしている面もあるので、親の死後にどういう段取りにして、お金をどう工面するのかといったことを相談しておくのです。もちろん、親の足腰が悪くなるなどして、存命中に引っ越しが必要になることもある。そういう場合も、相談しておいた手順で処分し、すぐに子供が駆け付けられる距離に中古マンションを購入するか、賃貸で移り住むのがいいのではないでしょうか」(小谷氏)
「住めば都」とは言うが、歳を重ねてからの環境の変化に大きなリスクが伴うことをよく理解しておく必要がある。
※週刊ポスト2021年7月9日号