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「生ジョッキ缶」「ビアリー」… 若年層への訴求力を強めるアサヒビールの戦略

アサヒグループホールディングス・勝木敦志社長(撮影/山崎力夫)

アサヒグループホールディングス・勝木敦志社長(撮影/山崎力夫)

アサヒ出向前夜の思い出

── 一方、ニッカの筆頭株主だったアサヒビールでは1987年に「スーパードライ」が大ヒット。2001年にはニッカの全株式を取得し、完全子会社としました。

勝木:私はそのころニッカの国際部門にいましたが、2002年4月1日に子会社からの出向という形でアサヒで働くことになりました。

 アサヒに通い始める前日の3月31日は忘れられません。「俺たち、もう終わったな」とニッカの同僚たちと泣きながら酒を飲みました。アサヒに出勤したら、廊下の端を歩かなきゃいけないんじゃないか……と。

──実際、肩身の狭い思いを?

勝木:そんなことは全くありませんでした(笑い)。「スーパードライ」が爆発的に伸びる中で、アサヒは中途採用を大勢受け入れており、みんな活躍していた。当時の日本企業としては珍しいほど、外部からの人材を受け入れる環境が整っていたんです。

 後にアサヒの経営戦略部でM&Aを担当するようになったときに、ニッカ買収時に社長が出した文書を見る機会がありました。その冒頭に「社員を出身で差別することは許さない」という言葉があって、感動しましたね。

──この5年ほどで、アサヒはグローバル化を目指し、欧州や豪州のビールメーカーを相次いで買収しました。その投資総額は2兆4000億円に上ります。勝木さんはその多くを取り仕切ってきました。

勝木:海外でのM&Aは、企業文化のギャップにどう折り合いをつけ、お互いを理解し合うかが大事です。現地の方々のモチベーションを保つには日本流を押しつけてもいけないし、かといって現地のやり方を野放しにするわけにもいかない。我々がこれまで成功を収めることができたのは、そのバランスを丁寧に保ってきたからだと思います。

 一方で、意思決定の合理性や、文書管理など、欧米式の経営には学ぶべきところもたくさんありました。それを国内の経営でも活かしています。

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