時代とともに、故人の弔い方も変化するもの。近年注目を集めているのが「散骨」だ。散骨とは、遺骨を墓地や納骨堂などに納骨・保管せず、粉末状にして海や山などにまく方法。日本の陸地はほぼ私有地のため、山野に散骨するのは難しいが、海にまく「海洋葬」なら可能だという。
この、墓を持たずに自然に還る方法は、墓の後継ぎ問題に悩む人々を中心に注目されている。これまでは、散骨についての規定がなく、節度を持って行えば違法ではないという解釈がとられていた。しかし、2021 年3月に、厚生労働省が散骨事業者向けに、「散骨に関するガイドライン」を発表。指針が明確になったことにより、いままで散骨に躊躇していた業者が参入しやすくなった。そのため今後、散骨件数が増加するとみられている。お墓コンサルタントの大橋理宏さんが話す。
「ただし、散骨についての条例や規則を別に設けている自治体もあります。個人で勝手に行わず、地元で実績を積んでいる専門業者に依頼することが大切です」
散骨の方法は主に、船をチャーターして1組だけで行う個別散骨、船に複数の家族が乗船して行う合同散骨、遺族に代わって業者に散骨してもらう方法がある。
まだ新しい葬送法。反対されることも
神奈川県在住の主婦A(59才)は、2005年に実母を海洋葬で弔った。
「生前、母は “死後は海にまくなり好きにしていいからね”と言っていました。ところが、父が散骨に反対したため、死後1年以上、海洋葬ができずにいました」(Aさん)
親戚からも反対された。墓を子供が守っていくという慣習を大切にする世代にとって、何も残らない海洋葬は受け入れられなかったという。
「父には説得して理解してもらいましたが、親戚は、普段からつきあいがあったわけではないので、結局無視することにしました」(Aさん)