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楽天・三木谷氏 世界へ踏み出す強力な武器となる、携帯電話の「完全仮想化技術」

楽天が開発した「完全仮想化技術」は世界でどう評価されるか(時事通信フォト)

楽天が開発した「完全仮想化技術」は世界でどう評価されるか(時事通信フォト)

【最後の海賊・連載第3回 前編】携帯電話市場に参入した楽天。三木谷浩史氏は、携帯電話ネットワークの「完全仮想化技術」で世界へ踏み出そうとしている。週刊ポスト短期集中連載「最後の海賊」、ジャーナリスト・大西康之氏がレポートする。(文中敬称略)

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「あと5年はやっていいかもしれない。この5年でかなり効果があったからね。あとはジョアン次第だな」

 7月15日の朝。オンライン取材に応じた楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史は、パソコンの画面の向こうでニヤリと笑った。

 三木谷が「ジョアン」と呼んだのは、スペイン・サッカーの名門、FCバルセロナ(バルサ)の会長、ジョアン・ラポルタのことである。

 楽天は2017年、バルサと4年(プラス1年の延長オプション)で320億円というサッカー史上最大のスポンサー契約を結んだ。楽天は去年、オプションを行使して契約は5年目に突入したが、それも今シーズンで終わる。

 バルサは今年、チームの財政問題や、スーパースター、リオネル・メッシの去就をめぐって揺れに揺れた。前任のバルトメウに代わった新会長のラポルタは、懸命にメッシを引き留め一時は「残留」と報じられた。しかし8月6日、バルサはホームページでメッシの退団を正式に発表した。

「メッシ バルサ退団 残念だけど、ありがとう!」

 この日、三木谷は自身のツイッターにこう書き込んだ。

 スポンサーから見れば、メッシの退団でバルサの価値は落ちる。一方、バルサでは「メッシの後継者」と言われる18歳のペドリのような新しいスターも育っている。東京五輪のスペイン代表のエースとして来日したぺドリは、日本代表を撃破した準決勝でも眩いばかりの輝きを放った。

 年間60億円を超えるバルサとのスポンサー契約には批判の声もある。バルサの世界的な人気は疑う余地もないが、楽天の海外売上高比率は18%。国内ではEC(インターネット・ショッピング)の「楽天市場」や「楽天カード」でトップに君臨するが、内弁慶の感は否めない。海外では「バルサのスポンサー」という知名度が先行しており、何をしている会社であるかはあまり知られていない。年間60億円の投資は「無駄打ち」と酷評されることもある。

 だが三木谷にとってバルサとのスポンサー契約は、ある種の必然だった。カタール航空とのスポンサー契約期限が切れた2017年、バルサのスポンサーに手を挙げたのは楽天だけではなかった。

 楽天関係者が明かす。

「米国のアマゾン・ドット・コム、中国のアリババ集団との競り合いだった。ウチが負けていれば、今頃、バルサの選手の胸には『Alibaba』のロゴが刻まれていたかもしれない」

 アマゾンとアリババは楽天と同じインターネット・ショッピングの会社であり、規模でいえば楽天より遥かに大きい。楽天が本気で世界を目指すならこの2社に負けるわけにはいかない。

 三木谷は自らスペインに赴いて当時会長だったバルトメウに何度も会い、「バルサというクラブの理念に共感している。単なるスポンサーではなくパートナーになりたい」と熱意を示した。バルサも米国と中国という二大超大国のいずれかに属する企業より、ニュートラルな日本を足場とする楽天の方が好ましいと考えた。

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