三木谷はRCPで、海外に打って出るための布陣を着々と整えている。2019年6月には日本の通信機器最大手NECと、完全仮想化ネットワークの構築で提携した。RCPで使う5G無線機などをNECが製造する。完全仮想化に対応した基地局の開発ではフィンランドのノキアと協力関係にある。
1&1へのRCP輸出に合わせ、完全仮想化のソフト開発を担当する関連会社の米アルティオスターを完全子会社にし、すでに子会社化しているネットワーク運用システムのイノアイとともに新組織「楽天シンフォニー」を立ち上げた。シンフォニーとNEC、ノキア。このフォーメーションで欧州、東南アジア、北米、中東などにRCPを売り込んでいく。世界の携帯電話インフラに対する設備投資は年間10兆~15兆円規模とされており、「10%のシェアを取れば1兆円を超えるビジネスになる」(楽天モバイル幹部)と見ている。
「We are building the Future(我々は未来を作っている)」
三木谷はこの言葉でカンファレンスを締めくくった。
カンファレンスに参加した世界のアナリストはこぞって「買い」を推奨し、楽天グループの株価は8月5日、約8%上昇した。RCPは三木谷が世界へ踏み出すための強力な武器になりつつある。
(第3回後編に続く)
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(日本経済新聞)、『東芝 原子力敗戦』(文藝春秋)など著書多数。最新刊『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)が第43回「講談社 本田靖春ノンフィクション賞」最終候補にノミネート。
※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号